FCCライセンス

ここでいうFCCライセンスとは、アメリカのアマチュア無線のライセンスのことをいます(FCC:米連邦通信委員会。日本の総務省の通信行政部門にあたる)。

取得することのメリット

米国領にて、日本のライセンスに縛られないで運用できる

日本とアメリカの間には、相互運用協定が結ばれていて、日本のアマチュア無線の免許を保有していれば、その免許内容をベースとしてアメリカ領で運用することはできますが、 日本、アメリカ双方のルールの制限を受けます。FCCライセンスを保有していれば、日本の免許の制限を受けることなく(例:空中線電力)、米国領内で運用できます。日本から飛行機で数時間のグアム、サイパンも含まれます。海外運用の機会・選択肢が増えます。

上級ライセンス取得の成果が目に見える形で与えられる

コールサインは試験合格後に、日本と同様に順番に割り当てられるものと、バニティコールといって、空いていれば申請できるものの2種類があります。が、いずれにせよ、 上級ライセンスを取得すると短いコールサインが与えられます。また、運用できる周波数がクラスによって制限されていますが、日本の3級、4級よりもっと細かいルールがあります。 例えば、HF帯のバンド下端はエキストラ級のみ運用可。ここに珍局がでていても他のライセンスクラスの局は呼べないのです。

日本の制度の良し悪しについて客観的に見られるようになる

何でもかんでも、アメリカが良くて日本がダメという気はありませんが、包括免許、安い取得費用など考えさせられることは多くあります。

デメリットですが、いったんFCCライセンスを取得すると日米の相互運用協定は適用されません。たとえ日本の1アマを保有していても、テクニシャン(下記参照、アメリカの初級)クラスでとどまると、運用範囲が却って狭まってしまいます。


取得方法

FCCライセンスを取得するには、試験に合格する必要があります。現在取得できるライセンスは3つのクラスにわかれており、それぞれ、テクニシャン、ジェネラル、エキストラと呼ばれます(後者ほど、上位クラス)。日本では、いきなり1アマを受験してもOKですが、FCCライセンスの場合、テクニシャンから順番に試験を受け、合格すると上のクラスの受験が可能になります。ただし、1回の受験で全部受験することは可。

受験資格

米国内に郵便物を受け取ることのできるアドレス(メーリングアドレス)があること。米国市民(US Citizen)や居住者である必要はありません。米国に家族がいる人以外は、あの手この手で確保することになりますが・・・。

日本のアマチュア無線技士の資格の有無は関係ありません。1アマ保持者であってもテクニシャンからスタートです。FCCライセンスを取得すると、日本国民であっても日本で開局できたりしますが、アメリカという国はそんな甘くはありません(もっとも、それが普通ですが・・・)。

試験

試験は日本国内でも行われています。試験の実施そのものは、一定の資格(VE)を有するアマチュア無線家(VEチーム)によって運営されます。合否はその場でわかります。合格すれば、CSCEという合格証が発行されるとともに、10日から2週間ほどでライセンス(含コールサイン)が発給されます。試験日程、必要な手続き、受験料等は各試験実施団体(VEチーム)がWebサイトを設けて案内しています。

FCCライセンスはペーパーレス化され、FCCが運営するULSというデータベース上で管理されます。

免許発給手数料

日本語で言えば、「免許発給手数料」になるかと思いますが、2022年4月19日以降、合格者に対する免許発給手数料(Application fee)として$35が必要となりました。受験者がFCCに対して直接支払います。受験したVEチームに支払うわけではありませんので、ご注意ください。


勉強方法

試験は、多肢選択式(要するに○×形式)の筆記試験です。問題はクエスチョンプールと呼ばれる公開済の問題の中から適宜選択されて出題されます。答えも公開されているので、問題と答えをペアで理解・暗記していけばOK。

試験勉強の方法については、いろいろな方が書いているので、割愛します。理解重視でいくか暗記重視でいくかは、それぞれの受験者の知識と英語力に応じて選べばいいと思います。

テクニシャン

日本では、第4級の問題が一番易しく、上級にすすむにつれてだんだんと・・・・
ということなのですが、FCCライセンスの場合、そうでもないように感じています。クラスによって問われるところ(主要論点)がちがうのです。テクニシャンでは、「アマチュア無線とは何ぞや」みたいなことが問われます。しかも、それが日本とは微妙に違う。さらに対象分野が無線なので、安全保障上の話とか、民間防衛とか、他所の国のことに加え、日本のような良く言えば島国、悪く言えば平和ボケした国に住んでいるとピンとこないことが出題対象になってきます。甘く見ない方がよいと思います。

ジェネラル

回路理論にウエイトが置かれます。西洋人は暗算で引き算ができないといわれたりしますが、なので問題中にでてくる数字自体は簡単。日本で2アマを勉強した人なら大丈夫。個人的には一番簡単だと思っています。

エキストラ

アマチュア無線の「実務」に関する問題が多い。例えば、RTTYはバンドのどの辺に出ているかとか、実際にやっている人なら勉強する必要もないと思います。ただ、EMEとか、メテオスキャッターなども出てくるから・・・。コルピッツ、ハートレー、ピアーズというLC発振回路の3種類が出てきたときはさすがに難儀。


試験当日

日本の試験と違うことをいくつか・・・

■各クラスの試験の解答時間に制限はありません。自分のペースで解答していけばOK。ただし、試験会場の物理的な制限はあります。
■日本のように「無線工学」「法規」といった科目の概念はありません。問題の出題順はバラバラです。
■運用の細部は各VEチームによって異なりますが、不合格になっても、その場で受験料を追加で払えば再受験可。ただし、別の問題が出題されます。

バニティコール(Vanity Call)

エキストラに合格すると欲しくなるのが、バニティコールです。コールサインは所有していた人が亡くなった、あるいは何らかの理由で手放してから2年経過すると、再割り当ての対象となります。放送局なみの4文字コールはアマチュア無線家にとって、最高のご褒美でしょう。今は申請費用無料なので、気軽に申請できると思います(以前は10ドルほど取られた)。ただ、W5YIのウェブにもありますが、W、Kで始まる1X2コール(プリフィックス1文字、エリアコード1桁、サフィックス2文字のコール)は極めて入手困難。ほとんど空いていません。数を数えたことがありますが、エキストラ級保持者全員に1x2、もしくは2x1の4文字コールは物理的に行き渡らない。

4文字コールは皆が欲しがるので、結局はボツになりましたが、ARRLは米国市民(US Citizen)でないFCCライセンス保有者に付与するコールサインは3文字サフィックスに限定するようFCCに要請したこともあります(リンク先ARRL記事の下から2段落目)。


VE(Volunteer Examiner)

VE(Volunteer Examiner)の認定証

FCCライセンス「道」の最後が、これ。以降、FCCライセンス試験の実施側に廻ることになります。ここまでくるともういいかなという感じです。ARRL/VEの場合、VEマニュアルの冒頭にあるOpen Book形式のQuestionnaireに回答し、ARRLに送れば(何らかの合否基準があると思うけど・・・)VEになれる。あとは、近くのVEチームに連絡して試験に参加させてもらうように依頼すれば、OK。

2018年11月追記
Tokyo VEチームでの試験実施の際、いろいろ情報が得られるのですが、ARRLは最近は米国外でのVE資格の授与はもう行わない方針とか。「米国外」は物理的な米国外なのか、米国籍あるいは永住権保有者以外という意味なのかはっきりしませんが。 いずれにせよ、ほとんどの日本人が「米国外」に該当するので、今後のVE資格の取得は困難ではないかと思います。また、今のVEもVEとして活動していないと更新されないようです。


関連リンク

NCVEC 全米のVEの委員会サイト 試験問題(クエスチョンプール)、受験申請用紙などがダウンロートできる。

ARRL/VEC Tokyo VEチーム

AE7Q 1x2、2x1の4文字コールサインのデータベース。これとは別に、以前、vanityHQという有名なホームページがあり、バニティコールの空き、申請状況がわかるサイトがあったが、閉鎖されている。

ARRL Website VEトップ

US Amateur Radio Baands ARRL Website 資格ごとの送信可能周波数範囲がわかる。


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